●書名
「サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福 」
ユヴァル・ノア・ハラリ (著), 柴田裕之 (翻訳)
河出書房新社
●どんな本?
人類(ホモサピエンス)がどのように進化してきて、これからどうなるのかを説明した本。
●どんな風に読む?
長い本ですが、ぜひとも、若いうちに読んでおいたらよいと思います。学校の歴史の授業とは違う視点で、人類の歴史を振り返ることができます。「人とは何か、他の動物とはどのように違うのか?」「これからの人類はどのようになっていくのか?」ということを考えることができる本です。
心理学や経済学、生物学などに興味を持って、そのような進路を考えている人は読んでみるといいでしょう。そして、そもそも人とは何かを考えることで、自分の周りにある問題なんて、たいしたことないものだと感じるような視点の転換ができるかもしれませんね。
●勝手なあらすじ解説
私たちは、ヒトとヒト以外の動物界とは大きく隔てられていると思いがちであるが、ホモサピエンスはただの動物の一種にすぎない。ホモサピエンスは3つの革命により、大きく進歩して、他の動物とは違う存在になった。
①サピエンスの最初の革命 「認知革命」
限られた数の音声や記号をつなげて、それぞれ異なる意味を持った文をいくらでも生み出せる言語を習得した。そのおかげで、私たちは周囲の世界について膨大な量の情報を収集し、保存し、伝えることができるようになった。そして、伝説や神話、神々、宗教という虚構(全く存在しない架空のもの)についての情報までも伝達できるようになった。
言葉を使って想像上の現実を生み出す能力のおかげで、他のどの種族よりも、大勢の見知らぬ人同士が効果的に協力できるようになった。想像上の現実での協力体制によって、遺伝子や環境の変化を全く必要とせず、新しい環境にも柔軟に適応して、生き残っていくことができるようになった。
②生活様式を変えた第2の革命 「農業革命」
より多くの果物や穀物、肉が手に入るだろうと考えて、狩猟正解をやめて、定住して住むようになり、農業革命が始まった。放浪の生活を放棄したおかげで、女性は毎年子供を産めるようになった。すると、人口が増えるので、食料が足りずに栄養不足が増加し、より多くの小麦を必要とするという、豊かではないが必死にコツコツと働き続ける生活が出来上がった。
農耕民がつくった食糧が余ることによって、自らは畑で働かない支配者やエリート層が出現して、支配者層と農耕民の間には格差が生まれた。そして、支配者・エリート層は政治や戦争、芸術、哲学をうみだし、彼らが歴史を紡いでいった。
これが繰り返されて、国や都市や町などができた。そこでは、言語を発展させて文字にして想像上の秩序を表して、その秩序の下で人々がお互いに協力することが管理された。もちろん、キリスト教や民主主義、資本主義といった想像上の秩序を維持していくためには、それらが絶対のものであると主張し、生活の中で人々を教育し続けることが必要となった。また、教育とともに、想像上の秩序を信じさせる努力として、ときに暴力や強制という手段もとられた。
国や都市の間で、交易が起こり、帝国が生み出され、普遍的な宗教が広まり、世界がつながっていき、今日私たちが暮らすグローバルな世界に到達した。
③未来に続く第3の革命 「科学革命」
科学革命によって、認知革命以降のありとあらゆることを理解しようとしてきた従来の知識の伝統を否定することとなった。科学革命とは、以下の3つ考え方である。(この3つこそ、今の中高生にも知っておいていただきたい。)
進んで無知を認める意思 近代科学は、私たちはすべてを知っているわけではないという前提に立つ。そして、知っていると思っていることも、さらに知識を獲得すると実は間違っていたと判明する可能性があることを受け入れる。
観察と数学の中心性 近代科学は観察結果を収集し、そこから数学的ツールを用いて包括的な説にまとめ上げる。しっかりとデータをとって、それを分析するということですね。
新しい力の獲得 近代科学は新しい説を使い、新しいテクノロジーの開発を目指す。
この科学革命により、従来の知識と比較して、世界の仕組みを理解したり、新しいテクノロジーを発明したりする能力が大幅に増大した。人類は新しい知識を獲得して、応用することで、どんな問題でも克服できると多くの人が確信を持ち始めた。貧困や病気、戦争、飢餓、老齢、死までも、人類の避けようのない運命ではなく、我々が無知であるがための問題なのではないかと考え始めた。それは、それらの問題が科学の力により生み出される新しいテクノロジーによって解決できるということを意味している。それを、進歩とよび、生活の様々なところで、進歩を繰り返してきたのが人である。
それと同時に、科学革命により、今まで人が協力するために信じてきた想像上の秩序さえも疑問に思うことが起こり、社会やコミュニティの形も変わり続けている世界をこれからも生きていかなければならなくなっている。
今後は超ホモ・サピエンスの時代として、人が自然法則を打ち破り始めており、これからは、テクノロジーや組織の変化だけではなく、人間の意識とアイデンティティの根本的な変化が起こり、「人類」ではなくなるかもしれない可能性まである。
その時に「私たちは何を望みたいのだろうか?」
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